「倹約は賢者の石(Thrift is the philosopher's stone.)」
金を生む技術というイメージが強い錬金術ですが、旧約聖書創世記にある「知恵の樹の実を食べる前のアダムとイブ」、すなわち原罪以前に人間を昇華させることを究極の目的とし、これにより世界と宇宙の昇華が叶うという一種の信仰であったという説があります。中世の有名な秘密結社フリーメーソンはその代表例とされ、彼らは、物質をより完全な存在に変える力、即ち、鉛などの卑金属を金のような貴金属に変えることや人間を不老不死にすることができるとされる「賢者の石」を探し求めました。この「賢者の石」を生み出す試行において、様々な化学薬品や実験道具が生まれたのです。化学(Chemistry)が、錬金術とともに前述のジャービルの書名に語源を持つ所以です。
ちなみにヨーロッパで最も有名な錬金術師は、古典力学及び近代物理学の祖アイザック・ニュートンです。今もイスラエル国立図書館に残るニュートンの錬金術研究の膨大な草稿群を入手し研究した二十世紀の経済学者ジョン・ケインズは、ニュートンを「理性の時代(age of reason)の最初の人ではなく、最後の魔術師だ」と評しています。しかしニュートンが生きた時代、ヨーロッパの人々にとって世界とは聖書の世界観で見るものでした。ニュートンも同様で、彼は生涯を通じてキリスト教を研究しています。
卑金属から貴金属を生成すること自体は、現代の原子核物理学によって理論上可能であることが証明されています。人工的に核分裂反応か核融合反応を起こすことによって貴金属を得るのですが、いずれも実用化はされていません。さてこの方法、最近どこかで聞いたような気がしませんか。そう、原子力発電の原理とほぼ同じなのです。原子力発電とは、簡単に言えば、核分裂反応か核融合反応のいずれかの原子核反応をエネルギーに変えて電気をつくることです。
知恵の樹の実を食べたアダムとイブは、主なる神との親しい交わりを失い、永遠の生命を失い、自然との完全の調和をも失いました。失った全てを取り戻そうとして探し求めた「賢者の石」を生み出す技術は、今、黄金(gold)の代わりに金(money)を生む経済発展の名の下に、電気を膨大かつ安価につくるために使われています。原子力発電が現代の錬金術と言われるのはこのためです。しかし、知恵を捨てるために生まれたこの技術で、一体どれだけの電気を作れば、人は幸せになれるのでしょうか。
ニュートンが残した膨大な草稿からは「地球は2060年に滅亡する」というメモが見つかっているそうです。人間の欲望は際限がないこと、そして、使い方を誤れば自ら生み出した知恵こそが人を滅ぼしうることを自覚しなければ、2060年を待たずに予言が的中する日が来てしまうのではないでしょうか。
「賢者の石」とは何か、今こそ考えるときなのです。
イギリスのことわざにも登場する「賢者の石」とは、古代エジプトの冶金術を起源とする錬金術のひとつです。エジプトのテーベでは、三世紀頃のものとみられる宝石の作成方法や金属変性法、着色法を記載した『ライデン・パピルス』と『ストックホルム・パピルス』が見つかっており、当時の技術を伝えています。その後、五世紀頃アラビアに伝わった錬金術は、かの地で本格的な発展を遂げます。有名なのがイスラムの錬金術師ジャービル・イブン=ハイヤーンで、酸、硝酸、硫酸の精製と結晶化法、金などの貴金属を融かす王水やクエン酸などの有機化合物の発見や、現在でも使われる蒸留装置ランビキ (alembic)を発明し、いずれも現代科学の基礎となりました。そして十二世紀、十字軍が持ち帰ったジャービルの著作「黒き地(エジプトのこと)の書(Kitab al-Kimya)」がラテン語に翻訳されたことからヨーロッパの錬金術(Alchemy)は始まりました。
金を生む技術というイメージが強い錬金術ですが、旧約聖書創世記にある「知恵の樹の実を食べる前のアダムとイブ」、すなわち原罪以前に人間を昇華させることを究極の目的とし、これにより世界と宇宙の昇華が叶うという一種の信仰であったという説があります。中世の有名な秘密結社フリーメーソンはその代表例とされ、彼らは、物質をより完全な存在に変える力、即ち、鉛などの卑金属を金のような貴金属に変えることや人間を不老不死にすることができるとされる「賢者の石」を探し求めました。この「賢者の石」を生み出す試行において、様々な化学薬品や実験道具が生まれたのです。化学(Chemistry)が、錬金術とともに前述のジャービルの書名に語源を持つ所以です。
ちなみにヨーロッパで最も有名な錬金術師は、古典力学及び近代物理学の祖アイザック・ニュートンです。今もイスラエル国立図書館に残るニュートンの錬金術研究の膨大な草稿群を入手し研究した二十世紀の経済学者ジョン・ケインズは、ニュートンを「理性の時代(age of reason)の最初の人ではなく、最後の魔術師だ」と評しています。しかしニュートンが生きた時代、ヨーロッパの人々にとって世界とは聖書の世界観で見るものでした。ニュートンも同様で、彼は生涯を通じてキリスト教を研究しています。
卑金属から貴金属を生成すること自体は、現代の原子核物理学によって理論上可能であることが証明されています。人工的に核分裂反応か核融合反応を起こすことによって貴金属を得るのですが、いずれも実用化はされていません。さてこの方法、最近どこかで聞いたような気がしませんか。そう、原子力発電の原理とほぼ同じなのです。原子力発電とは、簡単に言えば、核分裂反応か核融合反応のいずれかの原子核反応をエネルギーに変えて電気をつくることです。
知恵の樹の実を食べたアダムとイブは、主なる神との親しい交わりを失い、永遠の生命を失い、自然との完全の調和をも失いました。失った全てを取り戻そうとして探し求めた「賢者の石」を生み出す技術は、今、黄金(gold)の代わりに金(money)を生む経済発展の名の下に、電気を膨大かつ安価につくるために使われています。原子力発電が現代の錬金術と言われるのはこのためです。しかし、知恵を捨てるために生まれたこの技術で、一体どれだけの電気を作れば、人は幸せになれるのでしょうか。
ニュートンが残した膨大な草稿からは「地球は2060年に滅亡する」というメモが見つかっているそうです。人間の欲望は際限がないこと、そして、使い方を誤れば自ら生み出した知恵こそが人を滅ぼしうることを自覚しなければ、2060年を待たずに予言が的中する日が来てしまうのではないでしょうか。
「賢者の石」とは何か、今こそ考えるときなのです。
(2011/05/10)